ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)堤 未果アングロサクソンの価値観ー投資利回り最大化
欧米と簡単に言う人が多いが、英米とヨーロッパ大陸諸国では価値観はかなり異なっていた。英米では、企業は投資家(株主)の利益を最大化するために存在すると考えてきた。これを一言で表現すると、「投資利回り最大化」になる。投資利回りを最大化する方法は昔から決まっていて、発展途上国の中で一番優秀な国に投資することである。有能な人材を安い賃金で雇えて、効率よく物を生産できる国に投資することである。

ヨーロッパ大陸では、企業は地域社会に貢献するために存在すると考えてきた。雇用を維持し、地域の文化・経済に貢献するために活動すると考えてきた。これが後になって、国家に貢献するために発展していくのだが、ともあれ日本の考え方はヨーロッパ大陸のほうに近かったと言えよう。

19世紀のイギリス資本は根こそぎアメリカに移ったが、当時は投資利回りを最大化できる国がアメリカだったからである。そして今、アメリカ資本はアメリカ国内の工場を閉鎖して、中国・インド・ブラジル等に生産設備を移している。これは「投資利回り最大化」という価値観からは正しい行動である。

しかしアメリカではその結果、中流階級が就ける安定した仕事が激減して、安い時給のパートしか見つからなくなってしまった。それでも統計上は、失業者には入らない。そして地域社会は荒廃し崩壊していく。その一方で、投資できるまとまった資金を持つ富裕層はますます儲かるようになり、美観が保たれた高級住宅地に住むようになり、社会の二極分化が加速して進行していく。これがアングロサクソンの価値観の行き着く先なのである。つまり上位10%の富裕層のために、残り90%を犠牲にするのがその本質である。

個人を押しつぶす大きな歯車が回り始めたのか?
恐ろしさを感じる本です。何が恐ろしいかというと、それが現実だからです。国や、人種や、宗教の違いを超えて、人が人として暮らせないシステムの大きな歯車が地球規模で回り始めたような予感を抱かせる本です。豊かな国とは、貧しく路頭に迷う人々が少ない国、というのは幻想であることが分かります。どんな人でも幸せに暮らせる、つつましくでもいいので安心して暮らせる。そういった国にするためにはどうしたら良いのか。今なら間に合うのか。深く考えさせられました。日本もまさに瀬戸際にいるのかもしれない。たった今、リアルタイムに起きている変化を考えるためにも、まさに一読すべき本だと思います。

貧困から見たアメリカ
 「ある程度の富の再分配は、必要である」事が、この本の主張である。

 教育・医療など、民間企業風の効率重視・利益本位が全て正しいといえないジャンルも見極めるべきであり、何でも「民営化」がいい方法とは、いえないのである。

 そういう「生存権」的な部分をある程度保障しなくては、一度「低所得」の立場になってしまった人が、生活を立て直すチャンスを奪ってしまう。

 低所得であるという事は、日常の生活にも窮乏している為に、人生の選択が狭まるのである。そして、「収入を得る為には、仕事が選べない=弱者」の立場にたたされてしまう。

 すると、その弱みを利用して、“労働条件に文句を言わない低賃金労働者”を供給するというビジネスまで出来てしまう。やはり、ある程度国や政府レベルで調整をかけなくては、「健康的で文化的な生活」を保障するのが難しくなる。

 と、ここまでは納得できたのだが、後半の憲法九条に救いを持ってくるところが、私としても、やや違和感を感じました。殆ど論証をされずに、唐突に結論を持ってこられた感じは否めません。だから、星は4つ。
ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

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